伊邪那美命国土生 のバックアップ(No.5)


伊邪那岐命国土生 / いざなみ のみこと くにうみ
 古事記伝は三つの段(くだり)に分かつ
 今の世は一般に「国生み」とまとめる ここでは国土(くに)生みとしておく

 
 

 

淤能碁呂嶋の段 / おのごろじま の段

 
是(こゝ)に天神(あまつかみ) 諸(もろもろ)の命(みこと)もちて
イザナギノミコト・イザナミノミコト 二柱の神に「是(この)ただよへる国を修理(つくり)固め成せ」
天沼矛(あまのぬぼこ)を賜ひて 言(こと)依(よ)さしたまひき
故(かれ)二柱の神 天浮橋(あまのうきはし)に立たして その沼矛を指し下ろして かきたまへば
塩(しほ)こをろこをろに かきなして 引き上げたまふ時に その矛の末(さき)より滴(しただ)る塩
累積(つもり)て嶋と成る これオノゴロシマなり

 ミコト呼びの初出 主にアマテラス-オシホミミ-ニニギの子孫(みま)に用ゐられる
 未だ海(わた)の神は生まれておらず ここに海(わた)とは書かれてゐない

 
天津神 あまつかみ
地上の神との対比として 天(あま)の神 「つ」は「の」の意味
別天神は身を隠したとあり どの神かは不明
記伝五柱の別天神
まんがおもに神世七代の夫婦神5組

 天つ神の名の初出 ここではイザナギより前に表はれた15柱のうちの誰か
 のちには高天の原の神を指すことが多い

 
天沼矛 あまのぬぼこ
天つ神の差し出した天の沼矛 詳細不明:人工物 天然の結晶 偶然の産物
記伝(書紀に書ける字を思ふに) ヌは玉なり 玉以て餝(かざ)れる矛なり
まんがイザナギ・イザナミより前に 人工物はない
別天神が数十億年かかって得られた形としておく
素材世界的には銅の時代から鉄の時代に移り変はる
日本ではともに伝はり実用品は鉄 祭器は銅とに分かれる
天の沼矛は一般的に銅(青銅)に描かれる
 
天浮橋 あまのうきはし
記伝天(あめ)と地(つち)の間を 神たちの昇降(のぼりくだ)り通ひ賜ふ路にかゝれる橋なり
虚空中(おほぞら)に浮き脂の如くたゞよへるもの一屯(ひとむら)の物の中へ指下ろしたまふなり
鹽(しほ)は潮(しほ)なり 和名抄に潮(うしほ)
一般に 虹や雲の上から海をかき回す絵に描かれる
 
 
オノゴロシマ

[古事記:島] オノゴロシマ
・イザナギイザナミが海をかきなした天沼矛よりしただりおちた塩よりなった島 神に非ず
・オノゴロシマに降り立ち イザナギイザナミは天の御柱・八尋殿 みとのまぐはひ
・オノゴロシマにてイザナギイザナミの国生み
・(おそらくオノゴロシマ) イザナギイザナミの神産み
・本文中に イザナミの生ませるならず

[古事記伝] オノゴロシマ
・自ら凝れる嶋なり 大八州国の成るべき基(もとゐ)なり

[日本書紀] オノゴロシマ
・4-本文
・4-1
・4-2
・4-3
・4-4
・4-8

[画題]
・これより島を生むための胞(え 胎盤)と解される
・神(生き物)なのか 島(物質 無生物)なのか不明
・イザナギ退場後 オノゴロシマにのりて世界の海を駆け巡る

[クヂラ]

 
ヒルコ

[古事記:18] ヒルコ
・その嶋(オノゴロシマ)に天降(あも)りまして イザナギイザナミ 初めての子
・葦舟に入れて流し去(す)てつ
・本文中に 子の数に入いらず

[古事記伝] ヒルゴ
・神つ代に水蛭(ひる)に似たる兒(こ)をいひし稱(な)なり

[日本書紀] ヒルコ
・アマテラス・スサノヲと並びて生まれ 船に載せて棄つ (子の数に入れないとは書かれていない)
・4-本文 国生み ここにはヒルコなし
・4-1 古事記とほぼ同じ ヒルコ あしのふね アハノシマ
・4-10 アハヂノシマ・ヒルコ あしのふね
・5-本文 オホヒルメノムチ(一書アマテラスオホミカミ)・ツキノカミ・ヒルコ・スサノヲ
 三歳(みとせ)になるまで脚猶し立たず あまのいはくすぶね
・5-2 ヒ・ツキ・ヒルコ・スサノヲ とりのいはくすふね 三歳に満(な)りぬれども脚尚し立たず

[画題]
・神とは書かれていないが 神と思はれる
・初めの子生みにしくじれども乗り越える 神話の定型
・古事記では島の並びにヒルコ 日本書紀では神の並びにヒルコ 三歳になるまで立たず
・日本書紀本文に アマテラスはヒルメと書かれており ヒルコは太陽神に関はる名との説あり
・むしろ浮き脂の如くに連なるものとも思へり
・大きすぎるものは目に見えざりき まんがではのちに星の神となる

[ササガニ]

 
アハシマ

[古事記:19] アハシマ
・次にアハシマを生みたまひき 是亦(こも)子の数に入いらず (本文中の全文)

[古事記伝] アハシマ
・源氏物語帚木「あはめ惡(にく)み」を引きて 御親神のあはめにくみ賜ひし故の名と解す

[日本書紀] アハノシマ
・本文なし ヒルコ的なアハノシマ 島であるアハヂノシマ 名や扱ひが入り混じる
・4-1 アハノシマ 古事記と同じ内容
・4-6 アハヂノシマ・アハノシマを以て胞(え)としてオホヤマトトヨアキヅシマを生む
・4-9 アハヂノシマを以て胞(え)としてオホヤマトトヨアキヅシマを生む 次にアハノシマ

[画題]
・ヒルコよりさらに島に近い存在 古事記では葦船に載せていない
・まんがでは葦船に載せて流す のちに空の神

[カハホリ]

 
アハシマルヒコ

[古事記] なし

[画題] 阿波志麻留比古 アハシマルヒコ
・まんがに付け足し ヒルコの臍(ほぞ)より成りし神
・ヒルコとアハシマを星の神・空の神とする その子神は親を思ひ 空を見上げ啼いて跳ねたりき
・神集(かむつど)ひに言伝(ことづて)を伝へるかかり

[カハヅ]
・世界的に見て日本人は極端にカハヅ好き
・神話中にカハヅのはじまりに向いた神がゐないため 神を付け足す

 
左と右
古への日本は世界的にも珍しい「左上位」
何も書かれてなくても前(さき)に表はれた方は左 次に右
これによりて 夫婦神は男が左(向かって右)に立つ
まんが高天の原より大国主まで男が左 ニニギより入れ替はり男を右に描く
衣の袷古墳時代は左上位 前身頃の左を前(さき)に着付けるので今世とは逆さの袷(あはせ)
平安以降には右上位に変はり 右を前となり今世と同じ袷
まんがでは今世と同じ袷 特に描きわけない

・ヒダリの言葉が前に生まれ マガリからミギリとなり ミギとなる
 rightが右と正しいとの意味を含むが如く 世界のほぼすべて右上位
・古への漢土の国が変はるごとに 左と右の上位が変へられ
 あちらが左上位の王朝の頃に 日本への文化流入が盛んであったためらしい
・人の十分の一は左利き 藩主の子でもなければ右利きに直される サルは両手利き