天地初発の段 のバックアップ(No.12)


天地初発の段

天地初発の段 / あめつち の はじめ の段(くだり)
 本居宣長「古事記伝」に附けられた段分けと名前 古事記の原文にはない
 今世(いまのよ)の研究者より段分けが細かい 段が変はるとやや異なるところも在る

「天地初発之時」に始まる古事記本文

あめつちのはじめのとき「高天原(たかまのはら)」に 成りませる神の名は
 
ミナカヌシ

[古事記:1] アメノミナカヌシ-ノカミ
・はじめに表はれた神
・独神 記伝に配坐(ならびま)す神無き神 (一般に男でも女でもないとされる)
・身を隠す
・神より前(さき)に高天原はある

[日本書紀] アマノミナカヌシ
・本文になし 一書(1-4)にあり
・名前のみ書かれる

[画題]
・物語として整へられた神 記伝は俗言(さとびごと)に眞中(まんなか)と解す
・人の形をしているや否や 人の形に否ず
・照りかがやく光や珠でも良いけれど 人形(にんぎゃう)として良からず
・四角に丸 天地左右のない姿

[門]
・神それぞれに花や木や鳥をあてがふ これを門(もの もん)と名付く
・描き分けのための要素 ひとつの案
・次に描く人は使っても使わなくても 新たな門を加へても良い
・多くの人に描かれるうちに その神の「持ち門」が定まってゆくはず

[マキ]
・ミナカヌシの門はマキ(コウヤマキ)
・一属一種の日本固有種
・真木と書いてスギを指すこともあり

 
タカキ ☆ (タカミムスヒ)

[古事記:2] タカミムスビ-ノカミ タカギ-ノカミ
・はじまりの三柱のひとり 独神 身を隠す
・天石屋戸にて 子オモヒカネ
・天安河(あめのやすかは)にて アマテラスと並びて葦原中国へ ホヒを遣はす
・三年のち(おそらく天安河) アマテラスと並びて ワカヒコを遣はす
・八年のち(おそらく天安河) アマテラスと並びて 雉(きぎし) 名は鳴女(なきめ)を遣はす
・天安河 アマテラスとタカギノカミ(タカミムスビのまたの名)の所(もと)へ 矢いたりき
・矢を衝き返へすとワカヒコに中(あた)れり
・タカギノカミの娘ヨロヅハタトヨアキヅシヒメと オシホミミの子が ニニギ

[日本書紀] タカミムスヒ
・本文になし 天地開闢の三柱に名は見えず
・この神の娘タクハタチヂヒメの子はニニギ 一書は古事記と同じ内容
 1-4 始まりの神二柱 又云はく三柱のひとり (一書の中のさらに異伝)
 7-1 天岩窟(あまのいはや)にて この神の子オモヒカネ
 8-6 この神の一千五百座の子のひとりスクナビコナ (古事記ではカミムスヒの子)
 9-2 葦原中国へフツヌシ・タケミカヅチを遣はす 娘ミホツヒメをオホモノヌシの妻に
    娘ヨロヅハタヒメをオシホミミの妃(みめ)
 9-4 ニニギを降(あまくだ)す
 9-6 アマノオシホネに 娘タクハタチヂヒメヨロヅハタヒメを娶らす
    亦(また)は云はく ホノトハタヒメの娘チヂヒメ
    アメワカヒコのもとに ナナシヲノキギシ・ナナシメノキギシを遣はす
 9-7 娘アマヨロヅタクハタチハタヒメ
    一に云はく ヨロヅハタヒメの娘タマヨリビメ - アマノオシホネの妃(みめ)
 9-8 娘アマヨロヅタクハタチハタヒメ - オシホミミの妃(みめ)

[画題]
・はじまりの三柱のひとり 独神 日本書紀の本文になし 一書は古事記と同じ内容
・アマテラスと並びて八百萬の神にみことのり 高天原の共同最高神
・雛形 光を放つ一点から伝はる道(鍵穴型) 零壱の二択神
 天の岩屋戸にて「真賢木(まさかき)」の根・鏡・丹寸手(にきて) 勾玉は描き忘れ
・タカミムスビ 又の名はタカギノカミ
 次のカミムスビと一文字違ひは検索性が悪いので「タカキ」を主に使ふ

[サカキ]
・古へ 天の神と地上をつなぐ大きな木を「サカキ」と云へり
・神と関はりの深い木

 
カミムスヒ ☆

[古事記:3] カミムスビ-ノカミ
・はじまりの三柱のひとり 独神 身を隠す
・(高天原) オホゲツヒメの体より カミムスビ御祖の命 これを取らしめて種と成したまひき
・(葦原中国) タニグク曰く 此はカミムスビの子 スクナビコナ
・(おそらく高天原) 御祖の命は アシハラシコヲにスクナビコナと共に「其の国 作り堅めよ」

[日本書紀] カムミムスヒ カミムスヒ
・本文になし 一書にあり
 1-4 又曰く カムミムスヒ (一書の中のさらに異伝 微妙に異なる名)
 9-7 一に曰く カミムスヒの女タクハタチハタヒメ 児ホノニニギ (一書の中のさらに異伝)

[画題]
・葦原中国に協力的な神
・古事記に御祖(みおや)の命(みこと) 記伝「ムスビの御徳(みいさを)によれる御稱(みな)なるべし」
・3番目に表れた たてよこたかさ 三次元の神
・雛形 機械式計算機

[クスノキ]
・大きく育ち 水や虫に強いため船に用ゐられた
・日本を代表する香木

 
カミの訓み
 ミ(甲類):上 髪 紙  ミ(乙類):神 

 本居宣長は「神」を「上」からの名としたが 音が異なるため所以(ゆゑ)に非ず
 上代特殊仮名遣ひ 記紀と万葉集に用ゐられた古への言葉

 
三柱の神
古事記アメノミナカヌシノカミ・次にタカミムスビノカミ・次にカミムスビノカミ
此の三柱の神は 並(みな)独神(ひとりがみ)成りまして 身を隠したまひき

・この神たち 互ひに会うたことあるのか判らず
 2番目の神タカキは「吾は初めの神」とは云うてないので 1番目の神を知りたらむ
 ミナカヌシ本人は名乗らず のちにタカギ・アマテラスの付けた名では

・ムスビの二神は共に出ては来ないため 同じ神の異なる顔との考へもあり
 記伝「所見(みえ)顕(あらは)れ給はぬを云なり」 形体(かたち)無きに非ず
 江戸期には姿形のない神と思はれていたようで宣長はこれを否定している

・物語の上の役割であり信仰されていた神ではない
 記紀神話の八世紀に 全国的に信仰された神はほぼゐない

・まんがの三柱の神の門は[オミオツケ]

日本書紀本文の三神(みはしらのかみ):クニノトコタチ・クニノサツチ・トヨクムヌ
 国の正史に選(え)りたる名 自治体などはこちらを使いませう

 

 
次に国 稚(わか)く浮き脂(あぶら)の如くにして クラゲなす ただよへる時に
葦牙(あしかび)の如 萌え謄がるものによりて 成りませる神の名は

 記伝:和名抄に海月 水母 和名 久良介(くらげ)

 
アシカビヒコヂ ☆

[古事記:4] ウマシアシカビヒコヂ-ノカミ
・ウマシアシカビヒコヂ 独神 身を隠す

[日本書紀] ウマシアシカビヒコヂ
・本文になし 一書では初めになった神ながら本文に不採用
・1-2 はじまりの四柱のひとりめ
・1-3 はじまりの二柱のひとりめ
・1-6 はじまりの三柱のふたりめ

[画題]
・4番目の神 いきもの姿をした神のひとりめ やらかい神
・アシは力強い草木の代表 カビは芽で育つ力 コヒヂは泥(ヒコヂは男)
・まんがではスサノヲの遊び相手として出番を増やす(スサノヲに対等に絡める神は他にゐない)
・醸造 発酵 腐敗 きのこの神 酒甕の太鼓
・数十億年前よりゐてる

[ヒツジ ネブ(ネムノキ)]

 
トコタチ

[古事記:5] アメノトコタチ-ノカミ
・アメノトコタチ 独神 身を隠す

[日本書紀] アマノトコタチ
・本文になし 一書にあり
・1-6 アマノトコタチ
・日本書紀には別天神なし 次の神クニノトコタチが重要な神

[画題]
・5番目の神 かったい神
・ストロマトライトより前 数十億年前よりゐてる

[ネズ]

 
五柱(いつはしら)の別天神(ことあまつかみ)
上(かみ)の件(くだり) 五柱(いつばしら)の神は別天神(ことあまつかみ)

 記伝は柱を「ばしら」と訓むことが多い ここでは「はしら」としておく
 柱は神の数へ方 むしろ神を人と分かちて数へるため「数へ言葉(単位)」が生まれたか

 
天 あめ
記伝漢字(からもじ)の天(あめ)とは 虚空(そら)の上(かみ)に在る 大虚空(おほぞら)なり
阿米(あめ) 葦萌(あしもえ)の約(つづ)まりたるものか 青所見(あをみえ)とも然ることなり

 テンとアメとソラ 元は異なるものである

 
命・尊 みこと
古事記命:イザナギ・イザナミ アマテラス・スサノヲ ニニギ三代 
神:その他の天津神 国津神 大国主
日本書紀尊:三神 神世七代 アマテラス・スサノヲ ニニギ三代 
命:天津神  
神:オホアナムチ 国津神

 当時のミコトは一般に命 尊は使われてゐない文字

 

 
ミナカヌシタカキ ☆カミムスヒ ☆アシカビ ☆トコタチ

 五柱の別天神